昨日と違う私
ダブルデートの今日、約束の時間より早く着いた私達は改札口が見える柱に寄りかかって話していた
彼がじーと私の顔を見つめる
「どうしたの?」
「昨日とメイクの雰囲気が違う気がする…」
うーん、と首を傾げて考える彼が可愛くて仕方ない
「昨日とアイメイクとリップの色が違うんだよ」
違いを教えると彼は「そうなんだ!」と目をキラキラさせる
色が違うと言っても赤から青みたいにはっきり違うわけじゃない
それでも昨日との違いに気が付いてくれて嬉しくなった
それ以降は他愛ない話をして友人カップルを待っていた
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そっと包み込んで
休日、何の予定もないけど外に出てみようと身支度を整えて姿見鏡で全身チェックする
「ん、かわいい!」
鏡に写る自分に言うと玄関ドアを開ける
何となく駅方面に向かっていると大きな荷物を持ったおばあちゃんが階段を見上げて溜息をついていた
「あの!」
「はい?」
何も考えずに声を掛けてしまった事を後悔したのは可愛らしい顔でおばあちゃんが振り返った後だった
「えっと、荷物をお持ちしますよ
ゆっくりでいいので一緒に行きませんか?」
「ありがとう
助かるわ」
ぱぁ、と花が咲いたように笑うおばあちゃんに迷惑にならなくて良かったと胸を撫で下ろした
荷物を受け取り、おばあちゃんとゆっくり階段を登る
家族の話など沢山 話してくれ、楽しいひとときになった
「ここで大丈夫よ
ありがとう」
歩道橋で反対側の階段を降りた所でそう言われ、荷物を渡そうとするとそっと包み込むように抱き締めてくれた
「貴女のお陰でもう会えない娘に会えたようだったわ」
涙声のおばあちゃんをゆっくり抱き締め返すと服が濡れる感覚がした
時間にして数分だったが、私達2人にしては永遠の時だったと思う
おばあちゃんは荷物を持つと私に1度 頭を下げて歩いて行った
おばあちゃんの背中が見えなくなるまで見送り、私は実家に向かう
見知らぬ人とはいえ久々の人の温もりに触れて、無性に母に会いたくなったから
5/24/2025, 8:53:50 AM