灰と雪

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1年前


 このアプリに惹かれたのは「日記以外を書いてもいい」という点だった。創作の上では私は私じゃなくてもいい。本当のことを書かなくてもいい。自分を直視しなくてもいい気楽さが良い。
 と思って、次の日仕事がある日は短歌、次の日に仕事がない日は短編をひとまず書いてみることにした。
 今回の「1年前」というテーマも、何ものかになって創作しようと思った。でも、やっぱり思い出してしまう。

 1年前、私は今までの中で最も幸せな日々を送っていた。マッチングアプリで出会った    くん。出会う前から気があって、はじめて会った時は懐かしさを覚えた。1回目のデートで    くんから「結婚を前提に付き合ってほしい」と言われて、2時間悩みに悩んで、「この人がいい」とやっぱり思えたからお付き合いスタート。お互いの家は車で5時間かかるから、会うのは月に1、2回。会えない日は毎日通話して、寝落ち電話があまり好きじゃなかった私も、    くんとなら寝落ち電話を何回もできた。かっこつけな私にとって、    くんははじめて心から素を出すことができた人だった。

    くんとメッセージのやり取りをして、今日で1年と4ヶ月。
    くんと付き合って今日で1年と3ヶ月。
    くんと指輪を選んで今日で10ヶ月。
    くんからプロポーズされて今日で8ヶ月。
結納してから今日で6ヶ月。
婚姻届を出してから今日で4ヶ月。
    くんが亡くなってから、今日で3ヶ月。

    くんが突然いなくなって、毎日、私に明日なんてこなくていいのにと思いながら寝るのに、朝目が覚めることがつらい。でも、私はかっこつけだから、身内にも職場にも「もう平気です」なんて顔をしてやり過ごす。悲しい時、悲しいと言える人はもういない。つらい時、つらいと言える人はもういない。弱さも甘えも含めて受け入れてくれた    くんはもういない。


 

5/9/2026, 12:01:40 AM