まにこ

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夜が更けて辺りは厳かなる静寂に包まれていた。
リビングにあるダイニングテーブル。そこで少女が椅子に座っていて、その机上には沢山のテキストが所狭しと山積みになっている。そして恐らく夜食だろうか、温かいお粥とほんのり湯気を立てているお茶が小さな盆の上に乗せられていて、机の端っこに少し居心地悪そうに置かれていた。
手元だけがぼんやり光るようにスタンドライトを一つ付けて、ただひたすらノートにペンを走らせている少女。
目の前の課題に集中していたつもりだ。いや、集中していたからこそ気付いてしまったのかもしれない。
静かな部屋でカサカサカサと耳慣れぬ音が聞こえた。ギョッとして音の方を振り返ると、皆さんお馴染みの茶色いアイツがどこからが現れてこちらを見ているではないか。
少女は無益な戦いを避けるべくわざと足音を立てたり、机を叩いたりして脅かそうとした。元いた所にお戻り。それでもそいつは寧ろジリジリと距離を縮めてきた。
何で、どうして。私達争わなくても各々でやっていけるじゃない。言葉なんてなくったって分かり合えたはずじゃない。
少女の願い虚しく、ヨロヨロとこちらの領域にまで侵攻しようとするそれ。こうなると流石に身の危険を感じるわけで。殺虫剤を手に取り、遠慮なく思いっきりそいつ目掛けて噴射した。

余談だが、ホウ酸ダンゴには喉の渇きを発生させて弱らせ、且つ明るい所に引き摺り出すという性質があるらしい。
願わくば人知れずひっそりとその生涯を終わらせてほしいものだ。

8/29/2024, 10:15:35 PM