雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―ゆずの香り―

恵方巻きだとか、
雛人形だとか、
精霊馬だとか、
日本の伝統なるものは、
子供の頃こそ積極的に行っていたものの、
私のように成人にもなると、なかなか
手をつけようとは思わない
ましてや私はなりたてほやほやの社会人
季節の行事に気を配れる程のゆとりはない
今日が冬至であることすら、
今朝、ニュースで取り上げられているものを
見るまで、気がつかなかった
ショッピングモールに行く予定があったため、
「冬至」、「ゆず湯にぜひ」などと
書かれた紙と共に陳列されたゆずを見てみたが、
3個入で600円、ひとつ200円するそうだ
ゆず湯に使ってから、他の何かに使えるほど
私は器用でないので、
買うのは勿体ないという考えに至り、
購入は諦めた
でも、ゆず売り場に漂うほのかなゆずの香りを
忘れることができなくて
考えた末に薬局へ赴いた
辿り着いたのはハンドクリーム売り場
商品棚を見てみると…
『ビンゴ』
過度な主張などはなかったものの、
心做しか他の商品より広いスペースを
割り当て、並べられているのは、
ゆずの香り付きのチューブ入りハンドクリーム
あまりにも思い通りだったので、
ビンゴ、と思わず口に出してしまった
たくさんあるハンドクリームの中から、
ひとつを手に取り、レジで会計を済ませた
帰路につき、就寝前に
ハンドクリームを塗ってみた
手を近づけるとふわっと香る、ゆずの香り
沈みかけていた日常に、
ほんの少しだけ、光が差したような気がした

12/23/2022, 2:39:42 AM