ゆらりと黒く透き通った瞳を動かし瓶の中身に目線を移す。
(これを飲んでしまえば楽になれる、)
少女は知っているのだ。この瓶の中身を多量に飲めば、体の健康を引き換えに幸福感と数日間の眠りを手に入れることが出来ることを。
少女は知っていたのだ。それは逃げであると。1度試してしまったからこれを飲めば楽になれると知ってしまっていた。
全て投げ出して楽になりたい。
頭ではダメだと分かっているのに、欲がどんどんと脳内を蝕んでいった。
じゃらりと音を出しながら、出した量の分だけ口に含み水を飲む。
しばらく時間が経つと、少女はふわふわとした感覚のまま夢の世界に惹き込まれていく。
欲深い自分に失望すると共にこんな願いを込めた。
眠ったまま時が止まってしまえばいいのに、そんな河清を俟ちながら。
【時よ、止まれ】
9/19/2023, 10:40:56 AM