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#大事にしたい


残暑厳しい9月、私は父親と喧嘩して


日本を飛び出した。


もう、二度と帰らないつもりで、


パスポートと最低限の荷物を積めた鞄を手に、


当時付き合っていた彼の故郷であるスペイン行きの


チケットを片道分だけとった。


そこからは最悪な展開だった。


彼のとなりに眠る知らない女。


帰ることも、この街にいることも


出来なくなってしまった。


不運は続くもので、


財布を入れていた鞄を盗られて


警察に行ったが、


『ジャパニーズ?平和ボケしてるからね君たち』

 
泣きたくなった···。


道端に座り込んでいると不意に肩を叩かれた。


顔を上げると北欧系の50代ほどの男性。


全然似てないのに、父を彷彿とさせ、涙が溢れた。


そのまま肩を抱かれて泣きながら連れてこられたのは


彼の自宅だった。


同じ年代ぐらいの奥さんであろう女の人が、


男性に文句を言った後、豊満な体で私を抱き締めた。


落ち着きを取り戻し、食事をご馳走になりながら


それまでの事情を話すと、


『命があってラッキーだった。』


『家族の大切さが理解できてよかった。』


そのポジティブさに救われた。


ふと目についた、たくさんの写真。


子どもかと聞くと、そうだと笑顔で教えてくれた。


でも、先に神様のもとで私たちを待っているんだ。


せっかちな子だよっと······。


それから、夫婦の仕事を手伝い、


ホームステイさせてもらいながら、


なんとか帰るためのお金をためた。


また必ず会いに来ると約束して、


私は今、日本行きの飛行機に乗っている。

9/21/2023, 4:02:47 AM