海月 時

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「ずっと傍に居るよ。」
彼女と僕の約束。うん、ずっと一緒だよ。

「私、もう長くないんだ。」
唐突に告げられた言葉。持病がある事は知っていた。それが重い事も知っていた。それでも、まだ一緒に居たかった。
「だからさ。君とは、バイバイだよ。」
あぁ、その言葉を言わないでくれ。どうか君の口からは告げないでくれ。僕は彼女の病室から急いで去った。ドアを閉めた時に見えた、彼女の顔は泣いているように見えた。

僕と彼女は、中学で出会った。最初は只のクラスメイト。でも、日にちが経つたびに僕達は引かれあった。そして、付き合った。あの初々しい日からは、もう五年が経った。それでも、彼女への想いは色褪せない。それどころか、ますます好きになる。毎日が楽しかった。毎日が記念日だった。君だけが、僕の精神安定剤だった。でもそんな日も、もう終わる。あの約束、もう忘れているんだね。

「どうして来たの?私達はもう付き合ってないの。」
「そんなの嫌だ。僕はまだ君が好き。君は嫌い?」
「好きだよ。好きだから、別れたんだ。」
「そんなの分かんないよ。」
「君を泣かせたくなかった。」
「そんなのずるいよ。」
「知ってるよ。でも最後ぐらい良いでしょ?」
「僕は君が好き。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き。」
「どうしたの!?君、おかしいよ。」
「君は僕を置いて逝くんだね。だったら嫌い。」

意識が朦朧とする。何があったけ?あぁそうだ。僕は彼女を殺したんだ。こっそり忍ばせたナイフで。目の前には、赤く染まった彼女が寝ていた。綺麗だな〜。僕は彼女の傷口に口を近づけ、肉片を一口飲み込んだ。
「これで、ずっと一緒だね。」

彼女は僕の中に居る。そう思うと、心の健康は保たれた。やっぱり君だけが、僕の精神安定剤なんだね。そういえば、彼女は死ぬ前に何て言ったんだっけ。
「ごめんね。」
そうそう、こんな事を言ってたんだった。でもね、一生許してなんて上げないよ。

8/13/2024, 3:23:42 PM