世間が人の行き来を認めない時期だった。
仮に会いに行っても会えない、そんな頃だった。
そのことを、言い訳にした。
会えば認めざるを得ない現実から、逃げていた。
もともと社会人になってから、あまり家には帰らなかった。
半ば家を出たくて選んだ、今の仕事。
ようやく打ち解けたのは、10年ほど前のこと。
母は、変わらず、元気そうだった。
ただ、母に病巣が見つかったことも会いに行った理由の1つだった。。
どこか、言葉で語らずとも繋がっている感覚が、母とだけはあった。
だから、会えないことに罪深さを感じてこなかった。
大丈夫だから、といつだって言ってくれてるような気になっていたから。
予感がした。
朝、出勤前につけるマスク。
左耳にかけるときに、何故か、紐が切れた。
激しい動悸、心拍数はあがった。
結局、やっぱり、母とは、繋がっていた。。。
実家に駆けつけると、何事も感じさせない静かな時間が流れていた。
家路を急いだ理由も忘れるくらいに…。
どうしても、実感が、湧いてこなかった。
居間の横の部屋に、
すでに、主のいないベッドがあった。
その枕元、
いびつに切られた配送伝票が置かれていた。
!!
私の送った、季節の果物セットの送り状。
なぜか、これだけはずっと置いてあったのよね、と妹。
ヒザから、ガクッと崩れ落ちそうになるのを必死にこらえた。
待っていたのだ。
いつだって、私に会える日のことを。
ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、、、
喉の奥が熱くなりながら、
もう会えない事を、その時、はじめて実感した。。。
今、私は、実家に近いところで暮らし始めました。
季節が代わるたび、
近況報告をしに行ける位の距離に。
5/29/2024, 9:46:58 PM