雨亭

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長い夢を見た。

途方もなく続く夢だった。

ああ、目覚めることはないのだ、と悟った。

体と心が分離して、魂が宙に浮いた様な、そんな感覚があったのを覚えている。

まるで、魂がこの体に閉じ込められている気がして、「ここから出して」と言わんばかりに、意識と共に遠のいてゆく。

長い長い夢だった。

しかし、夢の中を彷徨う時、何かの拍子に魂が押し戻された。

ここにいてはいけないのだと、誰かが言った。

宇宙を駆ける星の速さで、魂は来た道を流れた。

宇宙の黒を抜け、空が見えて、土地が見えて、だんだんと加速して、最高スピードで流れる中で自分の寝顔が見えた。

そして突然に目が覚めて、天井が見えた。

体は鉛の様に重く、頭はトリックアートの様に渦巻いていた。

目覚ましは30分後に鳴る予定だった。

暖房の風に吹かれて、バイクが走る音が聞こえた。

朝まであと少し、もう少し彷徨いたかったのに、また此処に戻ってきてしまった。


4/1/2025, 5:01:36 PM