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晴天の下公園で今日も君を待つ。最後に会ったあの日を思い出しながら。出会ったのは3ヶ月前の事で、私はランニングをしていて一休みをしようとたまたま通りがかった公園へ入ったらそこには隣町の高校の制服を着たベンチで本を読んでいるとても綺麗な女の子がいた。
どこか儚い感じがあり目を離すと消えてしまいそうな印象があって視線を反らすことが出来ないでいると、
「どうかした? 私の顔に何かついてる?」
「い、いいえ。ただその綺麗な人だなって思って。」
「そんなこと面と向かって言われるの初めて。でも
ありがとう。」
容姿だけでなく声も綺麗なんて、と羨ましさを感じながら彼女の持っている本に目をやる。それはあまり知られてはいないが私が面白いと思い買った本だった。
「ねえ、あなたもその本好きなの?」
「うん、バッドエンドなんだけどどこか美しさを感じる話で何回も読んじゃうの。」
「分かる! 心が抉られるのが分かってても情景描写が綺麗でまた読んじゃうだよね。」
私たちは意気投合し気がつけば30分以上も話していて空を見るともう夕暮れになっていた。
「こんなに話が合う人初めて会った。」
「ええ、私も。」
そして私がさよならと別れを告げて帰ろうとすると、
「ねえ、良かったら毎日この時間帯に話さない?
私帰宅部で暇なの。嫌なら断ってくれていいから。」
「ふふっ、別にいいよ。私も帰宅部だし。」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑った。その笑顔が泣きそうに見えて私は何故か胸が苦しくなった。
その後、彼女とはどんどん仲が深まり最初はぎこちなかった口調も砕けてきていた。けれど彼女のあの消えそうな儚さは強まっているような気がした。
「でねその時妹がさ───」
「あはっ、面白い妹さんね。」
「あのさ、無理してない?」
「何が?」
「いや私ばっかり話してるし、なんとなく言いたいこと我慢してるんじゃないかなって。」
「そんなことないよ。あなたの家族の話を聞いてると私も幸せな気分になるから。」
「そうかな。」
「ええ、いつも楽しい話をありがとう。」
なんだか照れる。けどどうしてか彼女の顔は暗い。
「今日なんか変じゃない?何かあったの?」
「────っ。あの私実は、」
5時を告げるチャイムが鳴る。
「やばっ。もう帰らないと。」
「そうだね。帰ろう。」
「いいの?何か話そうとしてなかった?」
「ううん、何でもない。」
二人で公園を出ようとした時強い風が吹き目を瞑る。彼女を咄嗟に見たその時見えてしまった。スカートの端が捲れ上がりふくらはぎが晒される。そこには包帯がしてあり痣もあったような気がした。
「どうしたの?」
「な、なんでもない。」
その後はどうやって帰ったのか分からない。ただ漠然と嫌な予感がした。そしてその嫌な予感はすぐに当たった。
時間になっても彼女が来ないのだ。心配になる。でも彼女にも予定があるのだから仕方ないと帰ろうとしたら入口に姿が見えて走る。
彼女の格好はボロボロでまるで誰かに襲われて逃げてきたようだった。
「何があったの?大丈夫、落ち着いて。」
「ううっ、ひぐっ。」
「さあ、座って。」
彼女を座らせる。こんな風に苦しげに小さく丸まって泣く姿に悲しくなって背を撫でる。
「落ち着いた?何があったのか私に話せる?」
「ごめん。ごめんなさい。」
「大丈夫、大丈夫だよ。私はいつだってここにいる。あなたのそばにいる。」
「うん、ありがとう。」
暫く今までのことを忘れるように帰る時間になるまで語り合った。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
彼女の後ろ姿を見送る。なんだか二度と会えなくなるような気がして大声を上げる。
「明日も来てくれるよね!」
彼女はただ何もいわずに微笑んだ。それが彼女に最後に会った日だった。あれから3か月経ちもう季節は春になろうとしていた。私は彼女の事を何も知らない。なぜ包帯や痣があったのか。なぜ近くの公園ではなくここまで来ていたのか。なぜスマホを持っていないのか。私は何も知らない。だから私に出来る事はいつか来てくれると信じ待つこと。
「ねえ、桜綺麗だよ。君にも見せたいな。」
例え二度と君には会えないとしても、私は君のそばにいると約束したから。ずっとここに居るから。だから今日も私は待ち続ける。

『君と最後にあった日』

6/27/2023, 10:01:10 AM