とある恋人たちの日常。

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 家に帰ると恋人といつものハグをした後、ご飯を食べる前にお風呂に入るように言われた。
 
 お腹空いているんだけどな……。
 
 そんな事を言葉にできないまま、大人しく浴室に向かった。
 ガラリと扉を開けると、まず柑橘系の香りが鼻をくすぐる。爽やかで上品な香りがした。
 そして、珍しく湯船にお湯を張っていて、黄色いくだものがプカプカ浮いていた。
 
 香りの元はこのゆずだな。
 
 身体を洗ってからお湯に浸かる。中に入っているゆずを上からツンツンと続くと、ぽよんぽよんと沈んでは浮かんでを繰り返した。
 
 日本の冬至にゆず湯に入るというのは聞くけれど、今日は冬至じゃない。
 
 なんでだろう?
 
 そんな単純な疑問をお風呂に出た後、恋人にぶつけてみた。
 
「ゆず湯に入ると風邪をひかないって聞いたから、予防に! 本当は冬至? に、入った方が良いらしいんですけど、私知らなかったんで……」
 
 今日、職場でその話を聞いて、速攻ゆずを買って用意してくれたらしい。
 
 確かに今、身体は芯から温まっていた。内側から熱が出ていて、少し暑いくらい。
 
 少し前に、俺は声が出なくなる風邪をひき、風邪も治って、少しづつ声が出るまで回復した。そういうところで心配してくれたのかな。
 
 うーん。俺、愛されてる。
 
 
 
おわり
 
 
 
二二〇、ゆずの香り

12/22/2024, 1:06:07 PM