別れ際に
夕暮れ迫る街角
喫茶店の一番奥の席
四人向かい合わせの席に三人
向かい合わせの女二人に男一人
男側の女のそう細くもなく白くもない薬指に光る指輪がもう一人の女を弾いていた
一輪挿しの花瓶に
赤い薔薇が挿されていて
三人を見下ろすように飾られていた
その薔薇を見るように
視線を外す女の頬につたう一筋の涙が夕陽に光り拭う指に指輪が映える
艶のない唇とコーヒーカップが震えてる
男が見つめるのも話しかけるのも
その地味な女(ひと)
ブランド品と化粧で彩った
女には目もくれない
すっかりカタはついている
男なんてそんなもの
一枚の紙切れの関係は
薄いようで薄くない
夫婦の間には
深くて黒い河がある
今夜も舟を出す
CHANEL No.5
赤い唇に高いヒール
派手な女は席を立つ
別れ際吐くように 「やってられないわ…」
「はい、カットー!」
ドラマよドラマ(笑)
それはドラマ
正しく生きれないからドラマ
ドラマの中に入って殴り飛ばしたい?
馬鹿言ってんじゃないの!
ドラマチックに間違いが起きるからドラマ
絶体絶命の人間模様があるから
人生は面白い
もし 仮にそれがリアルでも
その虚構に嘘と現実の間に
人間模様を観るから
面白い 善男善女の話なら
お前が日常で
退屈そうにやってる暮らし
言ってる愚痴と変わらないからつまらないんだよ(笑)
監督は別れ際メガホンを叩きながら
そう 言って笑った
エンタメを観る時くらい虚構を生きてみろ
「よーい スタート」
令和6年9月28日
心幸
9/28/2024, 1:35:18 PM