紅月 琥珀

Open App

 その人は、桜のような人だった。
 いつも控えめで、大人しく⋯⋯けれども芯の強い人。
 常に微笑みを絶やさず、怒った所を見たことなかった。
 そんな彼女は、今私の手の届かない所にいる。

 学生時代の思い出。
 それをふと⋯⋯思い出したのは、桜の香りがふわりと香った気がしたから。
 この時期になると必ず思い出すのは⋯⋯優しく笑いかけてくれる彼女の事。
 彼女と過ごしたあの日々は、暖かで楽しくて⋯⋯それでいて安心するような心地の良いモノで、また、そんな日々が送りたいと思ってしまうようなモノだった。

 ふわりと、風が頬を撫でる。
 それと同時に運んできた桜の香りに、彼女の事を思いながら⋯⋯私は今日という日を過ごしていく。
 きっと彼女の事だから、どんなに辛い道のりでも、笑顔を絶やさず夢を叶えるでしょう。
 遠く離れた異郷の地でも――――――暖かな笑顔で、数多の人々を癒し、幸福を分け与えているのだろう。


3/6/2025, 12:34:47 PM