祷楓 (いのり かえで)

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『プレゼント』

子どもの頃からそんなに欲があまりなかった。
何を貰ってもうれしくなくて、クリスマスプレゼントもそのひとつだった。
そのまま大人になり、大人になった今でも、やはり欲があまりないまま。
でも、子どもの頃と違って、大人になったからこそちょっとしたプレゼントのありがたみを噛み締められるようになった。

……子どもの頃は、いつでも同い年の友達がいて賑やかで、たくさんの楽しいことを考えて気を紛らわせる方法なんていくらでもあった。
……ところが大人になったらどうだ。
周りはそのくらいできて当然だろうと、できないことがあれば容赦なく責め立てる。
早朝から夜遅くまで仕事をこなし、くたくたになって帰宅して眠るだけの単調な生活。

──昔の頃に比べて、なんと楽しいことが減っただろうか。
あの頃は煩わしいとすら思えたプレゼント。
だけど、今ならよくわかる。
プレゼントには、その人を喜ばせたいというその人の気持ちが込められているものだ。

魔法が使えない人間が、唯一簡単に人に使える『幸せな魔法』だということを、大人になってやっと気づけた。
私にも、そんな誰かのために幸せな魔法を使えるだろうか。
まずは常日頃がんばる自分へのご褒美に、『自分へ幸せな魔法』をかけるところから始めてみようと思うのだった。

12/23/2022, 11:11:28 AM