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「懐かしく思うこと」

ふわっと何処からか香る金木犀の香り

今年ももう秋か…
あの頃と何一つ変わらない景色と匂い、なのに私達はどんどん変わっていってしまった。

最近ではお互いに忙しく、同じ家に住んでるはずなのに顔を合わす事もすくなくなってしまった。

初めて出会った時も、告白して付き合う事になった時も金木犀が咲いてたっけな
あの頃みたいにまた2人で笑って過ごしたいな

そんなこと考えながらトボトボと歩いていたらふと花屋が目に入った。
こんなところにあったかな?と思い見ていたら店の中から、お姉さん、よかったら見ていきませんか?と声が聞こえた。

他に客もいないみたいでどうぞどうぞとそのまま店の中まで招かれ、あれよあれよと言う間に花束を勧められていたのだ。

どんな花が好きですかと聞かれても花なんて、実はこれっぽっちもわからずキョロキョロしていたら、何処からか金木犀の香りがした。

あの花でも花束って作れるんですか?あまり大きくないのがいいんですけど…

店員さんは優しく微笑み返してくれた。
今日はなんだか金木犀の花束が人気ですねと言いながらいろいろな花や草などと組み合わせてあっという間に可愛らしい花束が完成した。

それを、もって家に着くと、珍しく部屋の明かりがついていた。
私は嬉しくなってただいまと笑顔で帰宅すると、なんと数日ぶりに顔を合わせたはずなのに、同じ花束を手に持ち、まさに飾ろうと花瓶を出している彼女とぱちりと目が合い、彼女が驚いた顔で照れくさそうにおかえりといってくれた。

しばらくすれ違いの日々が続いていたのに、2人とも同じこと考えてたねと笑いあい、たまらず彼女を抱きしめた。
花束のおかげか、金木犀の香りと共に懐かしい思い出を語り合い、変わってしまったと思ってた懐かしい笑顔が今も変わらずそこにある事が実感できた。

10/31/2023, 1:21:14 AM