アサギリ

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【世界の終わりに君と】


ある日世界は告げた。
「生き残りたいでしょ?」
……耳元にはヘッドフォンの向こうからーーー。


その日は随分と平凡で。
ジンジンとアスファルトから熱が伝わり、ミンミンと蝉の鳴き声が世界を包んでるみたいだった。

暇つぶしに聞いてたTVからあの話が流れ出すまでは


「本日、非常に残念な事ながら、この地球は終わります」


泣きながらどこかの大統領は告げた。


地球に住む人類は大混乱。
窓の外は大きな鳥達が空を覆い尽くしてく。
蠢き出す世界会場と波打つように揺れる摩天楼

交差点は当然の如く大渋滞となり、老若男女なんぞ関係ない。
暴れ出す人、泣き出す少年少女
祈りだした神父を横目に追い抜き


私は全てを語る丘に向かう

どこからか声が聞こえる

「あの丘を超えたら、その意味が嫌でもわかる」


謎の声。意味不明な言葉。

でも何故か、動いてしまう両の足。

走る。走る。走る。走る。走る。走る。走る。


残り12分


残り9分


………あと、ーーーー1分!!!!!

息も絶え絶えに辿り着いたその場所からは
その場所から見えたのは白衣姿の数人のヒトカゲ

疑ってしまった。


信じたくなかった。


嘘だと思いたかった。


……だって、ここはまるで………大きな実験施設のような、街だったの、、だから。
私は知ったのだ。
今まで暮らしてた街は、小さな箱庭で。
私達は作られた生き物だった事を。


真実を知ったその時。首から下げてたヘッドフォンから声が聞こえた。


「実験は成功だ」

「この世界は素晴らしい」

「もう不要だ」

「もう必要ない」

「実験は終わりだ。もう……不必要だ。」

彼らの言葉に目眩がする。
巫山戯るな…………巫山戯るな!!!!!

お前らにとっては小さなお遊びだったかもしれないが、こっちは毎日!!毎日!!!!!大なり小なり一生懸命生きてきたんだ!!!!
それを道端に落ちてる小石の如く、軽々と捨て置くのか!!!!
お前らにとってはどうでもいい命なんだろうよ!!!
でも!!!ここに生きてる人にどうでもいい人達なんて居ない!!!命を弄ぶな!!!返せ!!!
返せ!!!!!私達の街を!!!返せ!!!!!


彼らは1つの爆弾を片手間の如く投げ打った。


世界は、この小さな箱庭は燃え尽きていく。

轟々と。熱風が肌を焦がしていく。
人々の悲鳴。
泣き喚く声。

助けて。………助けてと誰かが叫ぶ。

爛れる皮膚と喉を焼く硝煙で、声が出ない。

……あぁ、私、はもう………。

ヘッドフォン越しに微かに聞こえる女の子の声。

その声はもう、彼女には…………届かない。

「𓏸𓏸…………ごめんね。」


ヘッドフォンアクター/じん

6/7/2023, 12:05:47 PM