狐コンコン(フィクション小説)

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9:ススキ 11
(仄暗い表現があります)


「うわぁ!ねぇ、何あのもこもこ草!すごいすごい!!」

濡羽色に艶めく髪が傷つく事も汚れる事も気にせずにススキ畑に足を踏み入れていくものだから、私はつい貴方の手を掴んだ。

「だ、だめだよ、あ、あぶ、あぶないよ。よ、汚れちゃうよ。き、き、きれいな髪なのに……せい、制服だって、ススキが…」

大きな大きな背のススキ畑が貴方をすっぽりと隠してしまいそうで怖かった。

柔らかいように見えるススキだって、貴方の綺麗な髪を傷つけることも綺麗な制服を汚す事も簡単なのに何も気にしていない。ただ興味があるから、その一心。

「危なくないよ。ねぇ、ほらキミもおいでよ!柔らかくて気持ちいいよ。このまま進んで行ったら面白そうじゃない?」

私が貴方の手を掴んでいるはずなのに、まるで貴方が私の手を引っ張ってるみたいに足がススキ畑へ向かって進んでいく。
夕焼けがススキを強く照らして、目がチカチカして涙が出てくる。


「大丈夫、きっと楽しいよ」


そんな事を言われたら、引き止められたことが正解だと思ってしまう

貴方みたいに自由にもなれないし、流暢に喋る事もできないし、顔が綺麗なわけでもないのに、生きようと思えてしまう

私達はただのクラスメイトで、貴方は私の手首を見ても気にしないでいる事も言いふらす事もできたのに。
それをしないで私に綺麗な景色をただ見せようとする



私達2人がすっぽりとススキ畑に埋もれてしまった時、ただ涙を流す私を見て貴方は柔らかい笑顔でぼそりと呟いた。



「悔いのない青春、一緒にしてみよう」

11/10/2024, 10:37:31 AM