ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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声が枯れるまで

「声がなくなるまで」という歌があった。いつごろだっけ。たぶんあたしが若い頃。あたしもう若くないの? うーん。わかんないけど大人になった気しない。なんの話してたっけ。そう、そう、「声がなくなるまで」よ。ジュンスカよ、あたしあれすっごい好きだったのよ。声が枯れるまでじゃなくて、声がなくなるまで。声が枯れるくらいなによ。枯れたってまだ声があるなら歌いなさい。…そう、そう、あたしはそう思っていたの。自分がほんとに声をなくすなんて思ってもみなかった。あたし癌で声帯をとってしまったの。それでもあたしは声を出す訓練をした。ゲップの要領で声を出すの。ひどい声よ。カエルみたいよ。でもこれはあたしの声。いまあたしに出せる最高の声。あたしの声はまだなくならない。

10/21/2024, 10:39:22 AM