オツワイ

Open App

【遠い鐘の音】
鐘・神社・祈り・神聖・静けさ・厳か

 「お前は何を祈った?」
 「んー。特に何も」
 「んぇ、マジで?なんにも?」
 圭太は寝起きに水をかけられたみたいに驚いた。願わないなんて予想だにもしていなかったんだろうな。
 当然か。

 「なんで?」
 「いや、願ったってしょうがないだろ」
 「どうして」
 「願うってことは、そいつは自分で願いを叶えられるって思ってないってことだろ。他力本願な精神が見え見え」

 「うわ、その言葉刺さるわ」
 「なんだよ、受かりますように、とか願ったのか?」
 「悪いかよ」
 「いいんじゃね? 人の願いにまでとやかく言わねぇよ」
 「そうですか」

 しばらくして、圭太がボソッと呟いた言葉が印象的だった。

 「これだけ頑張って、祈ることすらできないって、しんどくね?」

 ……祈りは何も全てを押し付けるものではない。

 遠い鐘の音が聞こえた。努力が報われますように。
 少しくらい、祈ったっていいのかもしれない。


【あとがき】
 自分の作品はキャラクターが少ない。その弱点に気づき、前回からキャラクターを増やしました。
 今回は会話だけになってしまいました。まだまだ発展途上だと捉えますか。伸びしろ伸びしろ。

12/13/2025, 12:59:51 PM