彗皨

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『今日は11月22日「いい夫婦の日」ということで!斉藤さん!最近はご夫婦でどのような生活を送っていますか?』
『そうですねー。最近は夫と一緒に日帰り旅行に京都へ行きましたね。』
『おー!いいですね!はい!ということで本日はいい夫婦キャンペーンを…』

ピッ____
「いい夫婦……?馬鹿馬鹿しい。」

私と夫はもう少しで結婚30年目になる。
子供ももう成人済でこの家は私と夫二人で切り盛りしている。

「おい!何回言ったらわかるんだお前は!!飯はどうした!」
「すみません、今準備しますから。」
「今からだと!?お前な、一家の大黒柱に対してその態度はなんなんだ!!」
「…申し訳ないです。すぐ支度を始めます。」
「ならさっさと動けこのノロマ!!!」

見ればわかる通り私の夫はこのさま。
私はただの召使いのような扱い。

挨拶はもちろん、いただきますも言わないあの人は最初は凄く良い人だった。
沢山尽くしてくれて、子供が産まれてからも十数年は「いい夫婦」をしてくれた。
なのに1番上の子供が15歳になる頃、態度が急変した。
なんとなく想像はできてる。

浮気だ。

いい歳して若い女に騙されて最後までしたらしい。
私が夜暇をしても何も言ってこないのに。
正直、子供が成人してからはもうなんでもいい。
今は子供二人も相手を見つけて、もう少しで姉の方は入籍するらしい。

プルルルップルルルッ____
「…?はい、もしもし?」
「あーもしもしお母さん?ごめんねー急にかけちゃって笑」
「あら凪紗?しばらく話せてなかったから電話番号覚えてなかったわ。笑私ももう歳ねー。」
「だと思ったよー笑お母さんLINE全然見ないんだもんー。」
「お母さんああいうの疎いのよ。笑よく知ってるでしょ?」
「まあね笑」
「それで、どうしたの?急に電話かけきて。」
「いやー、まあ特にこれといった用はないんだけど…元気してるかなって」
「ほら、私もうすぐ入籍するし忙しくなるから今のうちに声聞きたくって笑」
「なるほどね。確かに私も声聞きたかったのよ。
改めて結婚おめでとう。凪紗。」
「え!?ちょっともうやだー笑まだ式も挙げてないっていうのに笑」
「それもそうね。笑それで、凪紗の方は元気してるの?」
「まあぼちぼちだねー。今ほんと一気に忙しくなっちゃって笑たまに体調崩しちゃうよ」
「あら大丈夫なの?また何かあったらいいなさいよ」
「…そうだね。言うようにするよ。」

少し間があった。

「…どうしたの。」
「えっ、?」
「何か含みのある言い方だったから。
それに、凪紗電話苦手でしょう?そんな凪紗から電話がくるなんて何かあったんじゃないかなって。」
「……笑さっすがお母さん。そうだよ」
「当たり前よ。何年母やってると思ってるの」
「単刀直入に言うけど、お母さん、まだ離婚してないの?」
「……えぇ。」

「…そっか。」

「凪紗と紗彩には申し訳ないけど、生涯離婚をするつもりはないわ。」
「…お母さん、昔からそれ言ってるけど一体どうしてなの?」
「あの人、冷めてるしあんなわかりやすい女に騙されて浮気もしたし今もお母さんに対しての扱い酷いんでしょ?なら離婚すればいいじゃん。」
「確かにそうかもしれないけど私があの人を選んだからには最後まで一緒にいるべきだと思う。」
「なんで、どうしてよ!」
「なんでって…それは」

『夫婦だからよ。』

11/22/2023, 2:47:03 PM