楠征樹

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《見つめられると》#23 2026/03/29

 愛くるしい、まんまるとした瞳がくりくりと。
 私のことを、無遠慮に見つめてくる。
 ちょっと恥ずかしくなって目を逸らして、でも、感じる視線に抵抗出来ず、ついそちらを見てしまう。
 ニコッと微笑むあなた。
 きっと、何も考えてない、その無垢な瞳に、つい微笑み返してしまう。
 キャッキャッと喜ぶあなたの、その柔らかそうな頬に、触れてみたくなる誘惑を必死で抑え込む。
 危ない危ない、これじゃあ私、犯罪者だよ。

 窓の外で流れている景色が、ゆっくりと静止していく。
 自動ドアが開き、春の外気が車内に流れてきた。
 あの無垢な瞳が遠ざかる。
 バイバイ、と心の中で呟きながら、私はその子に小さく手を振る。
 大切な宝物を抱える、その子のお母さまと目が合うと、お母さまからペコリと会釈をされた。
 そのお母さまも、あの子と同じ、柔らかな笑みを浮かべられていた。
 小さな幸せに出逢えたことに感謝をして、祈る。
 どうか、あの親子がこの先も幸せに暮らせますように。
 

3/29/2026, 12:14:38 AM