【枯葉】
「あれ?この辺だと思ったんだけどな…。」
だいたいの方向は合っていて、表記された所要時間は過ぎている。
「ゆっくり歩いて来たから、もう少し先にあるんじゃ?」
少し、遠い気がした。道を間違えているなら、早めに引き返したほうが良い。
「ちょっとココで待ってて。聴いてくる!」
メインストリートが幸いして、人通りは多いので、行きたい方向から戻って来ている人たちに声を掛ける。
「すみません。道を訊ねたいんですけど、これっぽい所、向こうにありました?友達と一緒に行きたくて。」
事前に調べていた施設のアクセスマップを見せる。
「え?あったっけ?…ドコ?あー、あったわ。でも、ドコ曲がるの?ちょっと入った所にあると思う。」
わいわいとカップルが、話してくれる。
「迷子かね?アラ、何処に行きたいの?」
気の良さそうな老夫婦が話し掛けてきた。
「友達と一緒に、ココに行きたくて。」
あっと言う間に、色んな人に囲まれてしまって、あぁでもないこうでもないと賑やかになって、結論が出た。
「皆さん、ありがとうございます!デートとお出掛け、楽しんで来てくださいね!オレも楽しんで来ます!」
木枯らしが軽く走って行って、枯れ葉が宙を舞う。
「わ、待たせちゃってる。」
大きく手を振ると、俯向いている顔が上がって、小さく手を振り返してくれるあなたがいた。
人集りを掻き分けて、ぽつんと佇むあなたの元へ駆けていく。
「お待たせ、かっちゃん。道、聴いてきたから。こっち、行こう!」
あなたの隣に、1枚の枯葉。
(一緒に待っててくれたんだ。ありがとね。)
あなたの手を取って、見送ってくれる人集りに手を振った。
「行ってきまーす!」
ぺこりと会釈するあなたの手を引いて、歩き出す。
2/19/2024, 10:54:38 AM