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あの人の言う『ごめんね』は「いいよ」と同じ意味であることが多い。
些細な言い合いもすれ違いも
「俺が悪かった、ごめんね」と引いてしまうし。
こちらのわがままも甘えも
「好きにしていいよ」と許されてしまう。

そんなの愛じゃないと言ったところで
「ごめんね、俺にはこれしか分かんないや」
へらりと笑っている。
そういうところが嫌いだった。

「ごめんね」も「いいよ」も俺のことは気にしないで、と距離を置かれているようで。
喧嘩をしてもその度にお互い少しずつ歩み寄って、
二人のかたちを作っていくものじゃないのだろうか?
思っていても口下手な僕は何も言えずに、代わりに涙が溢れてくる。
泣かれている理由も分からず慌てながら「ごめん、ごめんね」な、しきりに繰り返す姿。

(寂しいんだよ)

「…分かれよばか」
嗚咽に交じる悪態も、この人じゃなければ。

5/29/2024, 1:56:12 PM