『詩のなかで眠る』
ーある暮らしのための、やさしい断章ー
瞼に香る夢を背に
家に出掛けを告げる音
枕に沈む町並みを駆ける
バイクのエンジンが
吐息を軽く弾ませる
早く目覚めて語る虫が
営みを始める人に優しく囁く
鼓膜を震わせる蝉の合唱は
見上げた淡い青は裏腹に
大きく膨らんで低く垂れる
雲が涼しげに泳ぐその下で
言葉少なく俯く人の
項越しに射して返す暑さに
滲んで滴る雫にハンカチは
ポケットに深く沈む
儚く詠う暮れを見守る語り手が
靴音を家路へ軽く響かせて
歩くもののふに労る癒しの詩を
木葉の手を取る風に乗せて
そっと肩を揉みほぐして
眠りにつく
歌歌いの余韻が星へと登る
静寂と寝息が夜長に語る詩となる
7/11/2025, 11:33:53 AM