『傘の中の秘密』
雨粒が傘から滴り落ちる
アルコールを右手に
傘を左手に
真昼の緑道を歩いた
仕事を辞めた私は
昼間からお酒を
喉へと流し込んでいる
汗ばむ長袖と
首筋を伝う汗に
季節の移ろいを感じていた
生きる理由とか
生きがいとか
今はもう、わからない
わからないから、辞めた
まるで行き場を失ったみたいだった
空っぽの胃に
アルコールを注ぎ込む
それはきっと、自傷に近くて
思わず鼻で笑った
こんなふうに
感情に浸かっている
どうしようもない私を
雨が洗い流してくれる気がして
傘越しに空を見上げた
本当はきっと
世界はもっと広いのかもしれない
でも私は
濡れたビニール傘越しにしか
世界を見られない
それが私のすべてのように感じて
少し、切なくなった
もし、晴れたなら
今より遠くへ行けるだろうか
傘の中で
なぜか涙が溢れて
アルコールを持つ右手の袖で
そっと拭った
この感情は
私だけの秘密でいい
もし、願ってもいいのなら
次は、美しい場所へ行きたい
私は、
本当はもっと幸せになりたい
泣いて、笑って
感情のままに生きていたい
そんな思いが溢れ出して
涙が止まらなかった
どうか今だけは
好きなだけ、泣いていたい
雨音が静かに
私の泣き声を掻き消した
6/2/2025, 7:16:23 PM