「閉ざされた日記」
実家が引っ越しするとのことで学生ぶりに帰ってきた。10年ぶりだろうか。特に両親と仲が悪かったわけでない。田舎ではあるが地元が嫌いなわけではない。
ただ地元にいると自分の若気の至りというか、数々の黒歴史を思い出して息苦しくなるのだ。
喧嘩とかではなくわざと殴って開けた壁の穴、学習机にデカデカと彫った"LOCK'N ROLL"の文字、バレンタインでもらった義理チョコの包装紙。
懐かしいが直視もできないものたちをできるだけ思い出したくなかったのだ。
この際全て捨ててしまおうか。懐かしい想いに浸りながら押し入れを整理していく。
ふと卒業アルバムの隙間にノートが挟まっているのを見つけた。
忘れたことはなかった。
けれどこれもずっと直視できなかったものだ。
そっとページをめくる。懐かしい筆跡と自分の変わらない筆跡が並んでいる。
ああ、このあだ名はあいつしか呼んでなかったな。
バカみたいな話題ばっかりだ。唇に力を入れる。
最後のページは自分の筆跡で終わっていた。
よれて乾いたページにまた涙が落ちる。
ずっと覚えていても思い出したくないこともある。
忘れられなくても直視できないものがある。
黒歴史とはそういうものだ。
1/19/2026, 3:05:12 AM