藍間

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 どこか遠くで、幸せに暮らしていて欲しい。
 そう思ったからこそあえて遠ざけたその手を、時折ふと思い出す。
 たとえば剣を握る時に。文字を綴る時に。今頃どうしているだろうかと思いを馳せる。
 もう二度と触れなくてもよいと、そう思ったはずの温もりを思い出す度に、そんな自分に苦笑をこぼす。
「どうか」
 そうして人知れずに囁く。どうかどうか幸せに。どうかどうか再会することのないように。祈りを込めて囁いて、瞳をすがめて。
 それが浅はかな願いであると知りながら、今日もまた空を見上げてから、彼女は戦火へと足を向けた。

4/12/2023, 10:56:07 AM