あの日の月は赤かった。
血のように紅く、コンパスで描いたかのように新円で、地上から空に貼り付けたかのように大きかった。
あの日も私は、君と月を見ていた。
おどろおどろしく、神秘的に輝く赤の月は、あの日の血みどろに彩られた私たちの夜を照らしていた。
あの日、私は君の血に汚されていて、君は物も言わずに冷たく転がされていた。
あの日、確かに私は君を殺して、私の復讐と後悔に終止符を打ったのだった。
しかし、全てはあの日から始まった。
私が否応なく、毎日、君と顔を合わせなくてはいけなくなったのは、あの日からだった。
私の傷ついた手の甲を塞ぐようにできた、君の顔は、私の瘡蓋であり、腫瘍でありながら、紛れもなく孤立した君だった。
私は君と生き抜かねばならなかった。
それからの一年は、苦悩に満ちたものだったのか、楽しい記憶なのか、どうにも分からないようなものだった。
あまりにもいろいろなことがありすぎた。
しかし、あまり迷惑というものでもなかった。
君は思ったより人間であったことを、私は知った。
私が思ったより人間であったことを、君が知った。
そして今日、私たちは一切のしがらみから解放された。
私は一年前と同じように、血で汚れていた。
私の右手の甲で、血生臭い匂いに、君は顔を顰めながら咳き込んでいた。
月を見上げた。
君も見た。
月は一年前とは全然違う。
月色にほのかに輝く今日の月は、弓形に細く引き絞られていた。
今晩だけは、私たちの夜だった。
君と見上げる月は、いつも鮮やかだった。
9/15/2025, 2:25:03 AM