澄んだ瞳
眼鏡を新調した。それまでの銀縁から、黒縁の、ちょっと大きな眼鏡。気分転換で今までとは違うタイプを、と店員さんと話していた。
視力測定している時、店員さんが、
きれいな目ですね、と言ってきた。
僕は何と返していいかわからず、とりあえず、
ありがとうございます、と返した。
向こうからすれば、いつもの営業トークなのだろうが、目がきれい、と褒められたことがなかったので気恥ずかしさを感じつつ、内心では少し戸惑っていた。
縁の厚いタイプを選んだ理由。気分転換で、と言ったが、本当は、少しでも自分の顔を隠したいと思っていたからだ。弱々しい光の瞳を少しでも隠そうと。無駄なことだけどね。
結局、相手の反応が気になって、こちらも相手の目を見るから。目を隠すことなんてできないから。
もし店員さんの言う通り、本当に僕の目がきれいだったらどうしよう。
秘めた想いが遮ることなく、全て瞳に映ってしまったら。
あの人に丸わかりになってしまう。
想ってはいけないのに……。
7/31/2024, 3:26:37 AM