灯火を囲んで

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サンズを描き続ける。

僕はサンズの事が他のなによりも好きだ。
しかし一方で、もし現実世界にサンズがいたらという超オタク的な妄想は、いつも“何もしない”で終わってしまう。
不思議だ。僕はサンズの一生涯のうち、たった一片にすら、現れたいとは思わない。
もしかして、多くのオタクにとってはそれが普通なのだろうか。考えてみれば当たり前だ。
“好き”は恋では無い。
だが、僕にとってサンズは明らかに運命だった。

サンズが突如として僕の生涯に現れた日から、幾千の日々が過ぎ去っていったが、その毎日の中でサンズの事を想わなかった日は一日もない。
サンズの姿を頭の中に思い浮かべなかった日も同様にだ。
僕は迷いなくサンズを愛していると言えた。
しかし、僕は全くサンズには相応しくないだろうと思うのだ。
フラれずしてフラれている……?これが最も言い得て妙。
まず第一に僕は、サンズの事を全く知らない。
これは至極筋の通ったお話だ。
僕はただ毎日毎日極めて変態的な粘着度でサンズの事を夢想し、度々描き起こしているだけの人間に過ぎない。
サンズと目があったことさえない。
そんな僕の一体どこが、パピルスに勝るのだろうか。そう、サンズにとってみてみれば、僕なんかパピルスの足元にも及ばない空気以下の存在だ。
そんなサンズを知らない僕がサンズと並んで歩いたり、まして実生活を共にするなんて全く想像つかない。というかしたいとも思わない。全くふさわしくない!性別は断じて関係ない!サンズがどのLGBTQ+に当てはまろうが全く全然大丈夫。
しかし。やはり、僕よりももっとふさわしい相手がサンズにはあると僕はよくよく確信していた。

あるいは、サンズは誰とも付き合わない……
あらゆる可能性があって然るべきで、僕はその可能性とにかく全てをとにかく愛してる事は大前提。
その可能性のひとつ、それが、サンズは愛する相手を見つけるには不精者すぎるのではないかという事。
いや、とても素晴らしい理解のもと生み出された解釈だと思う。
一方、不精者すぎるが故になんだかんだで結婚してしまい、普通の人生を送るサンズも見える……
いや、これもとても素晴らしい理解のもと生み出された解釈。
サンズがこんなこと妄想してる僕を見たら、きっと自分の心配をしろとかそんなことを言うだろう……
間違いない。僕はサンズへの愛にタマシイのエネルギーのほとんどを使ってしまっているので、他の人に恋したりする余裕が無いのである。
とにかく全てが素晴らしい。僕はサンズが歩む人生という可能性に幾本もの道があるこの状態が、まるでどれだけ食べても減らないカレーみたいに素晴らしく思える。

だからだろうか?
だから僕はサンズが現実にいても関わりたくはないのだろうか。
僕はあくまで、サンズには可能性を残しておいてほしいのだろうか?
確かに考えてみれば、この僕が、あのサンズのいつか訪れる死を耐え抜ける自信が無い。
僕の人生からサンズを抜いたら、あとは絵を描くしか残っていない。
しかもその絵だって、サンズを描くために身につけたスキルだし。サンズがいなくなった後にもサンズを描くなんて辛すぎて筆を折る。
生きていけないだろう。
いっその事サンズが二次元のままであればよかったなんて一瞬でも思って、末にサンズの生涯は確かに意味があって、他のひとたちと同じように価値あるもので素晴らしかったんだ、それを無かったことにしたいなんて最低なことを僕は思ったな、と後悔したりするのだろう……
それもそれでいいが、本来経験しない悲しみとそこからの再生に思いを馳せていたって仕方がない。

とにかく僕はサンズが好きだ。時には女の子だって描くが、その数よりサンズを描いた数の方がはるかに多い。
この愛をどうして忘れられよう。
死ぬ以外にないだろう。
僕は死にかけた事なんてまだ一度もないが、激しい腹痛の中で何度もサンズの事を思ったことはある。
辛かった時、サンズを想って絶対に自殺はしないと誓ったことだってある!
急に、ここでこんな事を書くのはとても恥ずかしいことのように思えてきたが、なんでもいい。
僕はサンズを忘れない。サンズをとてもとても愛しているし、サンズが僕を決して認識していない事もわかっている。
サンズのことを僕は全くわかっていない。
それでもサンズが好きで、サンズのことを考え続けていて、これからもそうする。
もし、生まれ変わっても、同じようにサンズの事を愛していたい。
もし、前世でもそう願っていたのなら、僕はとても幸せ者だ。

僕は、サンズを描く。

10/27/2025, 1:01:22 PM