『消えた星図』
「星図ってさ、なんだと思う?」
「チーズ?」
「いや、星図」
「ああ、製図台の製図?」
「いや、星の地図と書いて、星図」
「知らんね……だけど、そのまま星の地図なんじゃないかい?」
「……そっか」
『拝啓、遥かなる昔に語り合った友よ。
まさか、お互い今のような事が起こるとは、思いませんでしたね。
あのときに、あなたと星図とは何か、談話したときが懐かしい。
友よ、今この時から、星図というものは消え去ります。
……いえ、はっきりいいます。私が消すのです。
二つの陣営に分かれ、宇宙を舞台に戦争を続け……
私はもう、疲れてしまいました。
だから、全てを灰燼に帰し、宇宙の塵とするのです。
さようなら、友よ』
私は、したためた紙を紙飛行機の形で宇宙へと飛ばすと、起爆スイッチを押した。
目から涙が溢れ出て止まらない。
爆音が周囲から鳴り響き、もはや阿鼻叫喚以外の感情が人類から消えたみたいだ。
凄まじい震動が起き、皿の上で揺れるプリンのように、次々と建物が揺れ動いて崩壊していく。もはや、まともな文明は残らないだろう。
宇宙には、大量の流れ星が……まるで流星群のように光り輝いた。
そして最期。
太陽が一瞬、光を失い辺りが漆黒の闇に包まれたかと思うと、いきなり膨張した真白の光が一面を覆い尽くす。
熱い……なんて感覚はとうに無かった。
こうして全てが失われ、全ての星図が宇宙から消えた。
――願わくば、もしも次に人類が生まれたときには、戦争なんて起こりませんように。
下らない日々が、ずっとずっと、続きますように。
私はそう願いながら、崩壊した身体と共に、意識が宇宙に溶けていった。
おわり
10/16/2025, 11:17:07 PM