呼び鈴を鳴らす。荘厳な音が指先から飛び出す。明らかに家の中でバタついた音がする。ほんの5分くらいしてから、まだ髪の毛もくるりとはねたままの貴方が慌てたように戸を開けてくれる。「どうぞ、入って」優しい声色が耳を擽る。この声が私の凍てついた心を一瞬にして溶かす。恋人ごっこの夜が今から始まる。ごっこでも真似事でも今更何でも良い。私を買ってくれる貴方に精一杯の春を届けよう。
12/20/2024, 9:20:54 PM