※BL描写
わざわざポップコーンを皿に盛って二人並んでソファに沈んだところまではよかったのだけれど、隣に座った彼はものの三十分で寝息を立て始めた。ここ一年、気を張り続けていた彼の、肩に伝わる重みが愛おしい。
アプリのサブスクリプションで再生している映画だから、手元のリモコンですぐ止められるのだけど、もうその頃には続きが気になるほどにはストーリーに没頭していたのでそのままにしておいた。
エンドロールが流れても、穏やかな寝息はそのままだった。
「映画、終わったで」
そっと名前を呼んで声をかけるけれど、この態勢で落ち着いてしまって起きることはない。
投げ出されている手に指先で触れる。ゴツゴツしていて、マメだらけで硬い手のひら。この手が好きでたまらない。この手が自分に触れる度に胸が幸福感でいっぱいになる。
「ほら、起きよ」
手をきゅっと握ってみる。すると、その途端に指が動いて彼の手のひらに包み込まれた。
切れ長の瞼は開かれ、瞳はたっぷりと慈愛を含んでこちらを見つめている。
何か言う前に、頬を撫でられる。
「いっしょにねよ」
この甘える声、温かい手、抗えるわけもなくて、彼の胸に身を預けた。彼はそのまま後ろにゆっくり体を倒して横になり、背中に腕を回してくる。
「離れないで」
耳元で囁かれて、瞼を下ろした。
12/9/2023, 3:08:22 PM