脚のない葦

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あの日のことを思い出す。
遠い昔、そう思えるけどつい最近のことなんだ。
5年、たった5年で僕の価値観はずいぶん変わった。
あの日夢見た愛は、必要がないと結論が出て。
あの日夢見た力は、必要だからと血反吐を吐いてる。
ああ、あの日の僕は気高かった。
今の自分は、紐を縊られているような気分だ。
ずっと、自分の力で漕いだ自転車と仰ぎ見た空を覚えてる。
灰色だった、だけどこの人生の中で三本の指に入る程に美しいと感じたのだ。
『■■■になったら■■■■』
ずっと頭の中を反芻していた、あの言葉を思い出す度。さあっと秋風が吹き抜ける、頭の温度を下げていく。あの日の僕が、どうして泣きそうな眼で笑ってたのか。今でも鮮明に思い出せる。僕は愛を捨てたかもしれないが、確かに同時に何かを確かに得た。あの光は、今も僕の手の届かない場所で眩しく輝いている。
今も、昔も、同じ場所で。ちかちかと、ときにブランコのように揺れながら。光っているんだ、それに手を伸ばす僕の手は醜い。
だけど、それでも良いと思うんだ、どうせ……
あは、絵空事はやめようか。

7/17/2023, 5:18:08 AM