300字小説
迎えのベル
うちのばあちゃんは自分の部屋のドアにドアベルをつけていた。
「耳が遠なったから、誰か来たらすぐ解るようにな」
ベルは昔、じいちゃんと住んでいた家の玄関ドアのもので、お気に入りの音色のものだった。
カラン……。
夜中、ばあちゃんの部屋のドアベルが鳴る。部屋を伺うと
「じいさんかい」
ばあちゃんの弾んだ声が聞こえた。
カラン……。カラン……。
その後もベルは鳴り響く。
「父ちゃんに母ちゃん」
「みよちゃんまで」
「だいちゃんもかい」
ベルの音とばあちゃんの嬉しそうな声は明け方近くまで続いた。
翌朝、俺は母さんに起こされた。
「おばあちゃんが……」
あれは迎えの人達だったのだろうか。
「大勢で賑やかに……。ばあちゃんらしいや」
お題「ベルの音」
12/20/2023, 12:01:27 PM