Kagari

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突然の君の訪問

「え、なんで来たし」
「行くって言ったろ」
「連絡したって聞いた」
「せめて既読ついたの確認してからにしてくれない?」

 私と弟は訳あって離れて暮らしている。自由人という言葉がしっくりくる弟は、そりゃあもう周りになんと思われようが関係なしに「思い立ったが吉日!」をモットーにアクションを起こすのだ。
 「既読ついてから来い」って言ったの、これが初めてじゃない。腐るほど言ってる。耳にタコが……できてほしいな、いっそ。
 今日は都合が悪いわけでもないから、黙って弟と後輩を家に上げる。

「お茶菓子なんもないけど」

 急な訪問が億劫なのは、独りでいたいとかじゃない。 
 自由人の弟とは生まれてからの付き合いなのでいつ来られてもいいように常に部屋を片付けている。だから、そっちの問題もない。
 単純に、おもてなし用のお菓子がないのが私的にいや。ただそれだけだ。

「持参したから紅茶だけ淹れてくれ」
「レモンタルトがおいしそうだから買ってきた」

 ああ、なんだ。それなら別にいいや。
 それにしてもレモンタルトか。弟、レモンに取り憑かれてるんじゃないかってぐらいレモン大好きだからね……。「紅茶を淹れろ」なんて言い方を図々しいなと思わなくもないが、

「レモンティー?」
「なんでレモンにレモン合わせるんだよ。ビタミンC不足か?」

 いや、あんたが前にレモン×レモンがいいって言ったんだが? と、言いたげな顔の後輩がジト目で弟を睨んでいた。私の代わりに。


(いつもの3人シリーズ)

8/28/2024, 11:17:07 AM