空の端が焼けたように鮮やかなオレンジに染まる。時間が来たのだ、と隣に立つ恋人の手を強く握った。彼も自分と同じ気持ちなのか同じだけの力で握り返されると、胸が締め付けられるような想いに駆られた。
愛しい人。この世界どこを見ても、どこを切り取っても、この人以上の存在には出逢えない程に大切な人。だと言うのに、祝福して貰えない。やめておけなんて言葉で済むのなら良い方で、罵倒を受けたり涙を流されたり……色々な反応を受けた。だから、逃げてしまおう、と。逃避行の言葉をこぼしたのはどちらが先か分からなかった。
「向こうだと祝福して貰えんのかな。」
「さぁ。ここよりも否定されたらどうする?」
「また逃げようぜ。地獄に落ちてもさ、そこでも逃避行だ。誰もやった事無いんじゃないか?」
「地獄で愛の逃避行なんて最高にロマンチックだね。」
「二人だけの最高の思い出になるだろ?」
そう言って彼が自分の頭に頬擦りする。さらさらでもふわふわでも無いというのに、よくやるよ。恋は盲目というやつなのだろうか?
「……愛してる。どうか俺と一緒に落ちてくれ。」
「無粋なこと言うなよ、僕も愛してるんだからさ。ねぇ、兄さん。」
靴を脱いで、キスをして。痛いかな、苦しいかな、俺が一緒にいるよ、ならいいか。そう言って俺たちは崖から飛び降りた。
1/3/2025, 9:55:15 PM