ほたる

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駅の改札口で、女子高生が三人。みんな短すぎるプリーツスカートの下にジャージのズボンを履き、スクバにじゃらじゃらと大きなぬいぐるみを下げた子たちだった。一人の子が、「じゃあ気をつけてね!」と大きな声を出したことで私の意識はそちらに向いた。その表情はなんの曇りもなく相手を思いやる人のそれで、私は友情って本当にあるんだなと思った。そして同時にそれを恨めしく思ったり、悲しくなってしまわない自分を心底安心した。調子の悪い日は過剰反応してしまう部類の出来事なのである。ここまでの出来事はたった数秒で、私はその風景を横目に改札内に入った。すると恐らく一人が改札を通った後も、「元気でねー!」「頑張れ!」などと言った大きな声が響き渡る。よほど仲がいいのか、少し迷惑だなと思ったし、恥ずかしくもないのかなとも思った。しかしその後すぐ聞こえた声で私の気持ちは簡単に変わった。「離れてもずっと一緒!」私の中の何かが崩れた。あの子たちのことは何にもわからない。今を生きる女子高生だということしか、わからない。今は卒業シーズンではないし、引っ越しでもするのだろうか。涙が出そうだと思ったけれど、別に出なかった。ただそこに間違いなく正しい形をしたものを提示されたことに、酷く動揺した。同時にあの子たちが本当に"離れてもずっと一緒"であることをただ祈った。私のようにはなってはいけないよ、なんて思ったりもした。私は三人が今日まで過ごした日々、撮った写真、交わした言葉などを勝手に想像した。冬が近づく風が吹く地下鉄のホームに降り立ち、こういう時、私は思う。こんな人間になってはいけないよ、と。

11/19/2025, 1:17:22 PM