一夜の夢

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ふたり手を繋いで春の花畑を歩くの。
太陽が祝福するみたいに日差しを振りまいて、あなたの髪にきらきら反射する。
わたしは幸せで、あなたも幸せなの。
怖いことなんて何もなくて、すべて満たされたふたりだけがいるの。
それからあなたが私を優しく抱きしめて、わたしは暖かいあなたの頬にキスをするの。
ねえ、すてきでしょう。

雪のような白いシーツの海に埋もれる君は、まるで春の訪れを待つ蕾だ。
君が囁く憧れは幸福の色をして、窓の外の寒々しい冬空に柔らかな温度を与える。

ねえ、あなた。
春が来たらきっと、花畑に行きましょう。
約束よ。

微笑んで、君は目を閉じた。
静かな、本当に静かな寝息が聞こえる。
僕は君の手を握ってやった。
せめて夢の中で、僕と花畑を歩いていてほしい。
幸せな夢が君の体に命を呼び戻してくれますように。
迫る喪失から君を守ってくれますように。

約束だよ。
僕は眠る君にそっと囁いた。

12/9/2023, 12:14:07 PM