かくもの

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どうしてこの世界は:



朝焼けを連れて陽が昇る。

夢の景色が溶け出したような色の空が少しずつ目を覚まして、どこまでも続く青に変わっていく。

白い雲が揺蕩い、時には雨を呼び、脳裏に焼き付く夕焼けのあとには夜が訪れる。

星の瞬きのなか日ごと満ちては欠ける月を追いかけて、また朝焼けとともに陽が昇る。

世界はただそれだけのはずなのに、僕らはいつも何かに追われるようにあくせくと生きて、勝手に疲れて、気が付けば世界を恨んでいる。

本当に恨めしいものは他にあるはずだけれど、途方もなく大きなもののせいにしないとやっていられない気持ちになってしまって仕方ない。

そんな僕らだというのに、どうしてこの世界はただひたすらに愛を注ぐように回るのか。

頼むから、あんまり綺麗なものを見せないでくれ。汚れた自分に耐えられないじゃないか。

何もできずに空だけ見ていた視界が溶けていくのをあくびのせいにして、未だ来ない眠気を待って目を閉じた。

6/9/2025, 7:43:18 PM