つぶやくゆうき

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朝、だと思う。
背中に少しの温もりと「大好きだよ。」とほぼ同時に頬に感じる愛の込められたキスで少し目が覚める。
でも目は開けない。開けてしまえば彼は気を遣ってしまうからだ。
そうでなくとも昨夜は私に合わせて深夜まで起きていたのだ。朝ぐらいは彼の好きなようにさせたい。

彼は朝型。私は夜型。

彼は23時には床に就いて、朝はいつも早く起きる。
なんでも午前中に用事を終わらせて午後は好きなことをして過ごすのが好き。

私は朝は惰眠を貪り、昼頃にのそのそ起きる。
身体が起き始めるのは夕方からなので、病院や銀行にでも行かない限りは用事は全て夜に回す。
そして床に就くのは2時か3時だ。

生活リズムはまるで噛み合わない。それに好き嫌いも趣味も一緒のものは無い。お互いがお互いにやっぱり友達と遊ぶ方が楽しいと公言するほどだ。更に言えば意見も食い違うことが多い。大抵は彼が折れてくれて喧嘩に発展はしない。

それほど彼は私のことを大事にする。
なんで私?と不思議になるのも不思議じゃなかった。

「顔か!それとも身体なのか!」と外見の善し悪しを聞けば「可愛いと思うけどそれが決め手じゃない。」と答える。
「性格がいいのかしら?」と内面の美しさに惚れたのかと聞けば「いや、じゃじゃ馬だと思う」と答える。
「それじゃ他の女より楽だから?」と怪訝な顔をして聞けば「どこが?!君を相手にするのは大変だよ」と答える。
(こいつ、なかなか褒めねぇな)と少しイラつき始めた頃、
「君には他の女性に無いものがあるんだよ。」と爽やかな笑顔とセットにして答える。
少しだけ照れてしまっていると、彼が顔を近づけきたので思わず身を引く。
キスは嫌では無いのだが、まだ恥ずかしい。
それを知っているかのように彼は「しょうがないね。」と別の話題に切り替える。

(またやっちゃった・・・)と後悔してしまうが、それを彼に言ってしまえば落ち込むだろう。心の中にそっとしまう。付き合ってから何回繰り返しているのだろうか。素直になれない自分に苛立ちはあるが、しょうがないと割り切るしかない。

それほど私は彼のことが好きだ。

だから、私が寝ている時は、素直じゃない私が身を潜めている朝だけは、
彼に身を委ねられるのだ。
寝ている振りをしているのは、多分彼も気づいているだろう。
でも、起きてしまえば距離を取ってしまうのだから仕方ない。

他の誰よりも、ずっと大好きな彼を感じられるのだから。


『誰よりも、ずっと』

4/9/2023, 11:42:39 AM