少し離れて空を眺めていたら、「星が好きなんですか?」と穏やかに話しかけられる。厳格なほど距離を保ち、マグカップを手に年配の男が座った。名札には『ひろさん』と書かれている。
身体の左側が焚き火に照らされ不思議なほど温かい。向かいで、串に刺さったマシュマロが数本焼かれていた。出入り自由の居場所空間と銘打たれたこの場所は、気付けば季節外れのバーベキューを呈している。
話のきっかけは本当に些細なことだ。年齢や性別や、どんな悩みを持つかなど誰も先んじて聞こうとはしなかった。ささやかな、けれど確固たる信念というか、傷つけず傷つかないルールみたいなものを祐未は感じた。
『灯火を囲んで』
11/8/2025, 9:59:01 AM