#3 風に乗って
桜は青々としは葉を繁らせ、
じんわりと汗を感じる季節になった。
火照った身体を冷ますように
風が少し強く撫ぜていく。
何とも言えない爽やかな心地は、
あの人と過ごした時を思い出させた。
からりとした空気とは裏腹に、
心は湿っぽい感傷に囚われる。
私の想いも風に乗って、
あの人のところへ届けばいいのに。
しばし歩みを止め、目を閉じる。
もう遠い過去、だから。
目を開けて再び歩き出したときには、
火照りも、ほんの束の間感じた未練も
ひと雫こぼれた涙と一緒に
風に乗って遠くに飛んでいった。
4/29/2023, 2:27:00 PM