「人と妖とが共存する国が昔あった」
そう語りだしたのは作家を目指している三十手前の男だった。名前はたしか……神木優? だったか?
「その国は妖を許さないとある宗教によって滅ぼされた」
今は彼の考えたプロットの話を、とあるカフェのテラス席で聞いている。
「国を作っていた妖の女王は殺され、人であった女王の愛人は再建させるために奮闘した」
目をつむり、頭の中で想像しているが、さほど面白くない。
「が、復興する前にまた人類が押し寄せ、愛人は殺され国は滅亡した」
フワッとした作品より、もっとキャラクターの顔が思い浮かぶような作品を作ればいいのに。
「愛人は死後、黄泉の国へ行くと妖の女王が人と妖の共存する国を作り上げ、皆笑い楽しそうに暮らしていた」
どうだい? と彼は聞いてくる。
俺は煙管に煙草を刺して火をつけ感想をのべた。
つまらん、と。
10/31/2024, 11:02:00 PM