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はぁはぁ、息が荒くなって行くのも構わず走り続ける。
「何か」に追いつかれないように。どうして、何で私
なのだ。そう思いながらも走って見つからないように
近くの教室に入って鍵を閉める。そしてロッカーに
潜り込んだ。しばらくはここで休もう。そしてこうなった経緯を思い出す。あれは数十分前の事だった。
「いやー、今日も練習疲れたね~」
「本当! 帰ったらすぐ寝るわ」
「勉強もしなよ? テスト近くなって来たんだから。」
「やばっ、すっかり忘れてた。」
「まったく。」
「あっそういえばさ、知ってる?」
急に彼女がワクワクした顔で聞いてきたので何だろうと
思って聞き返す。だが、大抵こういう時の彼女の答えは
ろくなものではない。
「何をよ。」
「知らないの? 幽霊が出るって噂。」
「知らないけど、どういう噂なの。」
彼女が言うにはこの学校では陰湿ないじめにより命を
絶った生徒がおりその恨みを抱えた魂が今も成仏しきれずに悪霊として彷徨っているらしい。そしてそれに出会うと自分も同じように自殺してしまうのだとか。
「またよく有りそうな話ね。」
「ま、私も信じてないけどさ。」
話しながら歩いているとあるものがない事に
私は気付いた。
「あっ、宿題机の中に忘れてきた!」
「ええっ! 早く取ってきなよ。待ってるから」
そして、自分の教室に向かって歩く。普段賑やかな学校がこんなにも静かで真っ暗だととても
不安になる。ふと噂を思い出す。いやいや、
そんなの嘘話だ。いるわけないと考えていたら
パタン、と足音が聞こえたような気がして振り返る。えっ?となりながらも前を向いた時、
「きゃあああっ!!」
頭から血を流してこちらへ歩いてくる女生徒がいて私は咄嗟に叫びながら逃げ出した。なんでよ、噂は本当だったの。泣きながら逃げて来て私は今ここにいる。でもいつまでもいても学校から抜け出す事はできない。幸い足音も今は
聞こえない。今だ、と考えてロッカーから出た。そして教室の扉を開けた時後ろに気配を
感じた。振り返ることができない。分かる事はただ一つ。私は二度と学校から出られないと いうこと。
「み つ け た」
笑う声がする。

『5月31日、〇〇高校で頭から血を流し倒れている女子高生を発見。教師の証言によると朝鍵を開けたらロッカーの前で倒れており──』

「ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。」


5/31/2023, 8:09:51 AM