珊瑚樹

Open App

辺りには色とりどりの花が咲き乱れ、太陽の暖かい光で溢れています。
どうやら今年も無事、春を迎えられたようです。

私は少しお寝坊さんだった様で、足元ではたんぽぽさんが枝を伸ばし始めています。

「おはようございます、たんぽぽさん。」
「おはよぉう。起きたのぉ?」
「はい、起きました」
「早く花を咲かせなよぉ。皆待ってるよ〜」

そう言われてハッとした。そうだ。起きたのなら咲かなくては。私が咲かなくては春が来たとは言えない。
うーん、うーんとしていると、周りの方達が声を掛けてくださいます。

「おはよう、お寝坊さん」
「早く早く!」
「春きたよ〜」
「まだ寒いよ?まだ寒いよ?」
「まだぁ〜?」
「咲くよ、もうすぐだよ」
「明るいね」

皆さん、一足先に春を担っていたようで色んなお話をしてくれます。

何処からか飛んできたうぐいすさんが教えてくれます。
「向こうの山では満開だよ」
暖かいそよ風さんが囁きます。
「皆君を待ってるよ」
昼過ぎの日差しさんが見守ります。
「大丈夫だよ。君もすぐさ」

私は少し焦りました。それでもまだ咲けなかったからです。さらにうーんと言ってると、一人の女の子がやって来ました。

私の足元に歩いてくると、たんぽぽさんを避けて私にそっと触れた。
そしてほうっと惚れ込んだようにして、呟いた。
「なんて綺麗な桜。もう春ね」

その言葉を聞いて、ぐーっと力が湧きました。
その途端私の体には花が咲き乱れ、枝先は重みで下がりました。まるで少女に差し出すように。

周りの方達がわっと湧きました。
「春だ、春だ!」
「きれいねぇ」
「すげぇ!」
「お寝坊さん、咲けたの〜?」
他にも言葉にならないざわめきが、辺りに膨らみます。

私はそんな様子を見ながら暖かい気持ちになる。
これからますます暖かくなり、より多くの草木が育つだろう。それをそっと見守れる喜びを、噛み締めた。

ここは日がよくあたる森の中。
大きな桜の木の元で、今年も春が来ました。

春爛漫

4/10/2026, 12:02:31 PM