かたいなか

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「『夜の海』と『真夜中』と『夜明け前』なら書いた記憶があるわな」
「夜」か。某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら呟いた――意外と朝より夜のお題が多いのだ。
「静かな夜明け」である。
少し文章を変えて、「静かな夜。明け方にはほど遠い」とでもすれば、
夜明け以外の時間帯も、なんとか書けるだろう。

ところで現在「夜明け」は何時頃だろう?
「一応、東京の日の出は、6時頃なのな……」

――――――

前回投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、某アパートにぼっちで住む、藤森のおはなしです。
藤森は今月で、今の「ブラックに限りなく近いグレー企業」から離職して、
そして3月1日から、自分の前々職であるところの図書館に、後輩を連れて復職するのです。

復職を打診してくれたのは、藤森の友人。
前々職の図書館で一緒に働いていた、付烏月、ツウキという男なのですが、
「付烏月の上司」を名乗る「3月から藤森のアパートのお隣さんになる男」、条志が、前回投稿分の終盤で、こう言ったのです。

『付烏月を信用するのは少し待て』。

友人を信用するなとは、どういうことでしょう?
条志は付烏月の何を知ってて、付烏月は藤森に何を隠しているのでしょう?
気になっていた藤森を、付烏月がその日の夜、おでん屋台に誘ったのでした。

「お前に『条志』って名乗った男はね、メッッッチャ正確に言えば、俺の出向元の上司だよん」
餅巾着を食べながら、付烏月が白状しました。
「あの図書館は、俺達が居る組織Aの偉い人が、
Aと仲良くしてる組織Bと一緒に共同で建てて、
Aと仲悪い組織Cにも情報提供してる私立図書館。
俺はAサイドの職員として、あの図書館に出向して、図書館の仕事してるワケ」

なかなか、色々入り組んじゃってるのよ。
付烏月はそう付け足すと、大根に箸を入れました。

「何故組織名を伏せるんだ、付烏月さん」
「まだナイショ」
「私に言えない事情があるのか。それとも、私と一緒に図書館に就職する、後輩の方にバレてはいけないタイプの情報なのか」
「それもナイショ〜」

「付烏月さん、」
「だから条志はお前に言ったのさ。俺を『信用するのは少し待て』って」

「……」

まぁ、いずれ数ヶ月後には、多分お前の後輩ちゃんが、色々気付いてお前に言うと思うよん。
アレコレ色々シークレットな付烏月、そう言って話を全部はぐらかします。
「まぁ、俺から今言えることは、
『俺はお前と後輩ちゃんのことを思って、図書館復職に誘った』ってことと、
『組織Cはイジワルで、俺達Aと関係のある一般市民にもイタズラするけど、Bとの取り決めで図書館勤務のやつには手出しできない』ってことかな」
結局、前回投稿分から、謎が深まるばかり。

ここでお題回収です。

「そろそろ閉店だよ」
おでん屋台の店主さん、ちょっと影が見えてきた屋外の景色を見て言いました。
「密会なら、また今度来ておくれ」
夜明けです。
そろそろ日が昇り、人々が起きてきて、通勤ラッシュとともに1日が始まります。
藤森と付烏月はふたりして、お金を払って、屋台から出ていきました。

夜明けとともに店じまいのおでん屋台です。
夜明けとともに客の居なくなる屋台です。
静かになったおでん屋台は、夜明けとともにゴロゴロがらり。店主に引かれて自分の寝床へ。
静かになったおでん屋台は、静かな夜明けを背景に、店主と一緒に眠りにつくのでした。

2/7/2025, 3:54:21 AM