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「へえ、なんか白すぎない?もっとさ、赤とか青とかカラフルな色とか入れたら」
引っ越してはじめて友達を家によんだ。
「白すぎてなんだか落ち着かないし、怖いよ」
ベッド、ソファー、タンスとすべて白で統一された部屋を見て、彼女は肩をすくめていた。
彼女が帰ってから僕は白い部屋を見渡す。そうなのか、落ち着かないのか。ベッドに寝転がってそのまま目をつむった。しかし彼女の言葉が頭から離れなかった。

「おいしいお茶が手に入ったから家きてよ」
隣の席に座る佐々木くんが爽やかに言う。佐々木くんと僕は数回話した程度の仲で、だから急に誘われ驚いた。
興味がそそられ、彼の家へ行くことにした。
「やあいらっしゃい」
涼しげな風が吹いた。風すらあやつれるなんてさすが佐々木くんだ。
靴を脱いでお邪魔すると、そこは魔の世界だった。
普段の彼からは想像できないほどに真っ黒な部屋。
「なんか怖いって言われたことない?」
佐々木くんは振り向いて首をかしげた。
「君は怖いって思うの」
「いや、僕はそう思わないけど」
ふうん、と佐々木くんが背中を向けて部屋の奥へ行ってしまった。
不躾ながら、キョロキョロとあたりを見回す。
「あ、そこ座っててよ。あとはい、お茶」
佐々木くんと僕は向かい合わせて座布団に座り、お茶をすすった。
「好きなんだよね、黒。かっこいいじゃん」
確かに佐々木くんの言うとおり、黒で染まった部屋はかっこいい。そしてあっさり好きと言えるのもかっこいい。
「あはは。なんだそれ。君の好きな色は?なに」

お気に入りのふかふかなソファーに身をゆだねる。
佐々木くん。僕の好きな色はね、白。この壊れそうな白が好きなんだよ。

6/22/2024, 12:52:47 AM