『手紙を開くと』
卒業した小学校での教育実習最終日。
かつて担任だったキヨ子先生に、お世話になりました有り難うございましたと頭を下げる。
「吉野先生、頑張りましたね」
そう言ってキヨ子先生はこの4週間を労ってくれた。
小学3年生の時、将来の夢は学校の先生ですと発表したのはキヨ子先生に憧れたから。いつでも優しく厳しく寄り添ってくれる先生。中でも、私は先生が黒板に書く美しい文字が大好きだった。
ある日先生にどうしてそんなに字が上手なのか尋ねると
「綺麗な字が書けるように、毎日練習をしているんだよ」
キヨ子先生にその時の話しをすると覚えてくれていて、あれから益々文字練習に励んだのだとか。
あははは…とふたりでひとしきり笑うと、先生がおもむろに封筒を差し出した。
「これ、頼まれていたものね。何か書いて欲しいってことだったから、好きな詩を書いたのだけれど」
ありがとうございます!早速見てもいいですか?とその場で手紙を開く。
また見たかった懐かしい先生の文字。私は暫く手紙から目が離せなかった。
5/6/2025, 9:57:10 AM