一森くま

Open App

第一話(全四話ほどを予定している小説になります) 

初夏の土曜、午前10時。
オフの日、二度寝して起きたとして
ギリギリの罪悪感で終わることのできる時刻だ。

さっきからLINEの音が鳴っている。
前日職場の飲み会で痛めた体にムチを打って、ゆっくり這い上がってスマホに目をやった。

「おはよう」

「今日、どうする?」

付き合って三年になる裕斗からだった。
私が社会人になってからというもの、土曜に会う時のデートはいつもフリープランになっていた。
お互いの体調やその日の天候に合わせてスタバでお茶だけすることもあれば裕斗の車で日帰り温泉に行くこともあった。返信に迷っていると、裕斗から続けてLINEが来た。

「今日は、晴れだったらいいな」

変な文章、と思った。
ベットから出てカーテンを開けると外は曇りだった。
よく見ると少し青空が見えている。

たまにしかつけなくなったテレビをつける。
ちょうど11時で気象予報の時刻になっていた。
もう、1時間も経ったのか。
ダラけていてなんだか裕斗に申し訳ない想いが募ってきたので天気予報はしっかり教えてあげることにした。

"本日の◯◯地方は概ね晴れるでしょう。
しかしながら微量な雨雲も見受けられますので
場合によってはところにより雨となるでしょう。
念の為、傘があると安心です。"

2024年にもなって、天気予報はいつでもこんな調子だ。
急に頭痛が襲ってきた。昨日の飲み過ぎが原因だろう。
裕斗が変なLINEをしてくるときは確か、いつも何かしらの意図があった。こんな時に限って。

裕斗に、晴れだよ!と言えない自分が憎かった。
同時に、大事なチャンスを逃した気がした。

つづく



3/24/2024, 1:23:14 PM